コラム

障害者手帳の取得方法とメリット・デメリット

本記事では障害者手帳の取得を迷っている方やこれから取得したいけれど取得方法がわからないといった方に向けて障害者手帳の取得方法と取得するメリット・デメリットについて紹介します。

●障害者手帳ってどんな手帳?
障害者手帳とは、身体障害者手帳、精神障害福祉保険手帳、療養手帳の三つを含む総称となります。それぞれ制度の根拠となる法律などは異なりますが、いずれも障害者総合支援法の対象となりさまざまなサービスを受けることができます。対象の疾患や障害に当てはまる方やそのご家族の方はぜひ、取得の手続きを行いましょう。
●障害者手帳の種類別取得方法
障害者手帳の内容によって対象の疾患や取得方法が異なります。障害者手帳の種別ごとの手帳内容と取得方法について紹介します。
●障害者手帳−その①身体障害者手帳
身体障害福祉法に基づいて発行される手帳となっており、障害程度1級から6級に該当することが認められた人に交付されます。主に視覚障害や聴覚障害、平衡機能障害など身体に疾患がある人の日常生活の支援や自立を目的に発行されており、手帳をもっていることで自治体の提供する各種福祉サービスを受けることができます。 身体障害者手帳は障害が永続することを前提には発行されるため障害が発行してまもない乳幼児期や永続しないと考えられる場合には発行されない可能性があります。具体的には疾病の治療に伴う一時的な人工肛門の造設や加齢や知的障害に伴う日常生活の動作不能による障害などが該当します。
●身体障害者手帳の取得方法
身体障害者手帳の取得ステップは以下の通りです。
1.市区町村の障害福祉担当窓口で診断書の書式をもらう
2.診断書をもって指定医師を受診
3. 市区町村の障害福祉担当窓口に申請
4.身体障害者手帳の交付
まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で身体障害者診断書、意見書の書式をもらいます。書式をもって医師のもとへ診断を受け診断書の交付を受けます。その後、診断書類をそろえて、該当する市区町村に書類を申請します。医師への確認や等級認定審査を行い、判定が終わり次第交付となります。申し込みから約1ヶ月程度で交付されますが、医師への確認や等級審査に時間がかかる場合はさらに交付まで時間を要する場合があります。 身体障害者手帳には有効期限がないため、障害の等級が変更となった場合や返還の手続きを必要とする場合には本人が窓口にて手続きを行うようにしましょう。
●障害者手帳−その②精神障害者福祉保険手帳
うつ病や統合失調症、不安障害といった精神障害全てに適応される手帳となっています。手帳を取得することで、日常生活や社会生活を総合的に支援する障害者支援法の対象となり、自治体や企業が提供するサービスを受けることができます。対象疾患としては、うつ病や双極性障害、適応障害、統合失調症などの精神障害、または、広義の発達障害がある人で初診から6ヶ月以上経っている方となります。障害の程度によって1級から3級に分かれており、1級の方が症状が重く3級のほうが軽いとみなされます。等級の判定は精神保険福祉センターで行われており、適切な食事や金銭管理、清潔保持等ができるかどうかなどといった内容をもとに判定されます。
●精神障害者福祉保険手帳の取得方法
精神障害者福祉保険手帳の申請は住んでいる市区町村の障害福祉課にて行います。申請に必要な書類等は住んでいる市区町村によって異なりますがおおまかに以下の項目が挙げられます。
・指定医による意見書や診断書
・本人確認ができる書類
・証明写真
・印鑑 など
※市区町村の細かい情報は該当するホームページにて確認ができます。
基本的には本人による申請となりますが、申請が困難な場合は家族が代理で行うことも可能です。精神障害者手帳は申請を受けてから交付されるまで約3ヶ月かかるといわれています。障害者雇用枠での就職を希望している方や医療機関の負担軽減を希望している方は早めに申請手続きを行うようにしましょう。また、2年ごとに更新制となりますので注意が必要です。
●障害者手帳−その③療育手帳
知的障害者手帳はおおむね18歳までの発達期に知的障害と判定された児童に発行される手帳です。知的能力障害ともいわれており、18歳以上の方でも知的機能によって日常生活や社会生活が困難と判定される場合には発行されます。療育手帳を手にすることで、自治体が提供する各種福祉サービスを受けやすくなります。身体障害者手帳、精神障害者福祉保険手帳が法律に基づいて交付されるのに対し、療育手帳は厚生労働省の「療育手帳制度要綱」を参考に都道府県と政令指定都市が作っている制度です。地域によって細かな違いがあります。例えば、療育手帳の呼び名と等級の表し方はお住まいの地域によって異なることがあります。東京都の場合は「愛の手帳」と呼ばれ、等級は重たい順から1度、2度、3度、4度と表しています。愛知県の名古屋市では「愛護手帳」と呼ばれ、等級は東京都と同じです。大阪府の場合は一般的な名称となる「療育手帳」と呼ばれ、等級は重たい順にA、B1、B2となっています。療育手帳を取得できる場所としては、18歳未満であれば児童相談所、18歳以上で知的障害と判定された方であれば知的障害者更生相談所です。
●療育手帳の取得方法
療育手帳の取得ステップは以下の通りです。
1.市町村の障害福祉関連の窓口で申請
2.児童相談所等で面接
3.判定
4.療育手帳の交付
まず、お住まい市町村の障害福祉関連の窓口で必要な書類に沿って申請をします。その後、心理専門職による検査や医師による本人や保護者との診察をします。検査と診察を踏まえて都道府県などで知的障害の有無、その程度を判定します。判定されたら療育手帳が交付されます。児童相談所での面談は予約待ちで数ヶ月待たされることあるほか、面談から交付までは約1ヶ月から2ヶ月かかりますので余裕を持って手続きを行うようにしましょう。市町村から書類が届いたら最寄りの役所に交付を伝えて手続きが完了します。
●障害者手帳を取得するメリット
障害者手帳を取得するメリットとしては大きく2つあります。
1つ目は「割引や控除を受けることができ生活費の支出を抑えられる」です。住んでいる自治体によって異なりますが、例えば医療機関の受診や公共施設や公共交通機関の利用料、携帯電話の利用料金といった日常的に利用するサービスが割引になります。保育料や税金などが対象になることも多く生活費を削減することができます。 2つ目のメリットとして「障害者雇用枠で就職することができる」が挙げられます。障害者雇用促進法では企業に対して一定数の障害者の雇用を義務付けています。求人のなかには障害者手帳を取得している人のみを対象とした「障害者雇用枠の求人」が存在します。障害者雇用枠で採用されると、障害に理解のある職場で働くことが可能となり、周囲に相談できる人が多いといったメリットがあります。障害への理解や配慮のある職場で働きたい方や自分一人で安定した状態を維持することが困難だと危惧する人は障害者雇用枠で就職することがおすすめです。障害者手帳を持っていることで、一般雇用枠だけでなく障害者雇用枠でも就職先を探すことができます。
●障害者手帳を取得することによるデメリット
障害者手帳を持っていることによる対外的なデメリットはありません。しかし、手帳を取得することで「自分は障害者なんだ」と精神的にダメージを受けてしまうケースが考えられます。特に、まだ自分の障害や病気を受容できていない人に多く、周囲に障害のあることが知られてしまうことを危惧することで取得を躊躇してしまいがちです。しかし、手帳を取得することでレッテルを貼られるといったことはありません。必要がなくなれば返却することもできます。取得することに迷われている方はある程度しっかりと自分の障害と向き合った上で手続きを進めるとよいでしょう。
●まとめ
障害者手帳の取得方法とメリット・デメリットについて紹介してきました。障害者手帳は保持していることで自治体の提供するさまざまなサービスを受けることができるほか、就職窓口を広げることも可能です。ご自身の疾患と照らし合わせながら必要な障害者手帳を取得し、障害者総合支援法に基づいたよりよい暮らしを築いていきましょう。

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