コラム

生活介護について

「障害者総合支援法」は、障がい福祉サービスや、障がいのある方が必要とする総合的な支援について定めた法律です。
この法律には、“障がいのある人が障がいのない人と同じように生活し、共に活き活きと活動できる社会を目指す”という、ノーマライゼーション(normalization)の考えにもとづいた理念や、障がい者の権利が記されています。
現在、「障害者総合支援法」のもとで多くの福祉政策が実施されていますが、なかでも障がい福祉サービスのひとつである「生活介護」へのニーズは年々高まりを見せるばかりです。
ここでは障がい福祉サービスの中核をなす「生活介護」について解説をしていきます。

生活介護とは?
「障害者総合支援法」にもとづく福祉サービスには、障がいの程度に応じて個別に支給が決定される「障害福祉サービス」と、市町村の裁量で柔軟に適応される「地域生活支援事業」に大別されます。「障害福祉サービス」は、介護を中心とする「介護給付」と、生活訓練などを中心とする「訓練等給付」の二つに分かれます。「介護給付」で提供されるサービスは、以下の9種類です。

① 居宅介護:自宅で行われる入浴、排せつ、食事など、日常生活で必要とされる介護
② 重度訪問介護:重度の障がい者への入浴、排せつ、食事など必要とされる介護
③ 同行援護:視覚障がい者の外出への支援
④ 行動援護:自己判断能力が制限されている人の外出時等に、危険を回避するための支援
⑤ 重度障害者等包括支援:介護の必要のきわめて高い人への、居宅支援等の包括的な支援
⑥ 短期支援:介護者が病気の場合などに、短期間行う、施設で入浴、排せつ、食事などの必要とされる介護
⑦ 療養介護:医療と常時介護が必要な人に、医療機関で行われる介護
⑧ 生活介護:常に介護を必要とする人に、障がい者支援施設などで日中に行われる介護・活動支援
⑨ 施設入所支援:施設に入所する人に、夜間・休日に行われる介護

上記のうち①~⑤は、自宅や外出先で行われるのに対し、⑥~⑨は主に障がい者支援施設や医療・介護施設で行われます。
生活介護(⑧)は、その中でも医療施設以外の施設において、通所・入所する人に対して行われる日中活動の支援サービスという位置付けです。
生活介護の支援内容と目的
「生活介護」とは、「障害者総合支援法」にもとづく「障害福祉サービス」事業のひとつです。常に介護を必要とする重い障がいのある方が、障がい者支援施設などを通所や入所によって利用することで、日中の活動の支援を受けることができます。
具体的には入浴や排せつ、相談や助言、食事など利用者個々に必要な介護サービスの提供や、そのほかにも創作的活動や生産活動の機会の提供など、利用者一人ひとりが活き活きと活動できるさまざまな取り組みが事業所ごとに実施されています。
生活介護ではどのようなサービスが提供されているのか、また支援の目的について詳しく見ていきましょう。
1.自立支援と日常生活の充実のための活動支援
生活介護支援は、障がいのある方が日中での生活を自立できるよう、生活動作から社会活動まで、幅広い支援サービスを提供していることが特徴です。
サービス内容は事業所ごとに異なりますが、利用者個々のニーズや障がい特性を勘案したうえで必要なサービスが提供されます。
具体例としては、食事や入浴などの日常動作のサポートや、炊事、掃除など家事に関する支援、心身機能の維持や向上を目的とした軽いウォーキングや穏やかなストレッチなどです。ほかにも書道や絵画、生け花などの創作活動や、手作り小物の製作や布製品の折り畳み、チラシの折り込み作業など、軽作業を主とした生産活動が挙げられます。 生活介護における生産活動は、経済的自立を主な目的とした「就労支援」のサービスとは異なりますので、工賃や作業時間に関して規則上の違いがあります。
2.社会生活のための支援
生活介護サービスを利用することで、利用者は多くの人との豊かな交流を持つ機会を増やすことができます。友人や支援者などとの交流を通じて、利用者の対人関係や活動の幅が広がることは、新たな生きがいややりがいの発見に繋がるとも言えるでしょう。 利用者が社会のなかでさまざまな経験を積んだり、生活の幅を広げたりすることや、地域社会のなかでの役割や喜びを創出するために、事業所によっては地域活動への参加などを通じて、社会生活のための支援を積極的に行うところも見られます。 具体例を挙げると、事業所で開かれるお祭りイベントに近隣住民や地域の子供会が参加することや、利用者が地域の季節行事に参加をすることなどです。 これらの支援は利用者の生活圏域の拡大や、地域社会への参加を促進するのみならず、ノーマライゼーションの実現を通じて、豊かな社会を育むことにも繋がっています。
3.利用者の心身の状況に応じた支援
利用者一人ひとりの障がい特性や障がいの程度は、それぞれ異なります。 そのため、生活介護を提供する事業所では、個々の心身の状況に応じた身体介助や医療的ケアなどの専門的な支援が必要です。 生活介護では、事業所ごとに生活支援員や理学療法士、作業療法士などによる心身機能の維持・向上のための専門的支援や、食事、入浴などの日常生活のための支援のほか、日常生活上のバイタルチェックや服薬の管理、健康や生活に関する相談などの支援も行われています。 このように、一人ひとりの障がい特性に合わせた支援を行うことで、利用者が安心して過ごせる環境が作られています。
生活介護を受けるには?
生活介護を受けるには、どのような手続きが必要なのか分からない方も多いかもしれません。ここでは、申請方法や受給までの流れをわかりやすく解説します。
【生活介護の対象者】
生活介護の対象となるのは、地域や入所施設において安定した生活を営むため、常に介護などの支援を必要とする人です。 対象とされる障害支援区分は以下のように定められています。
①離職票を取得する
障害支援区分の区分3以上の方が対象。障害者支援施設などに入所する場合は区分4以上の方が対象。
②50歳以上の場合
障害支援区分が区分2以上の方が対象。障害者支援施設などに入所する場合は区分3以上の方が対象。
③生活介護と施設入所支援との利用の組み合わせを希望する場合
障害支援区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い方で、指定特定相談支援事業者により、サービスなどの利用計画案を作成する手続を経た上で、市町村から利用の組み合わせの必要性が認められた方。
【障害支援区分】
「障害者総合支援法」おいては、「障害支援区分」に応じたさまざまな障がい福祉サービスの提供が定められています。
「障害支援区分」とは、障がいや心身の状態などにより、必要とされる支援の程度を段階的に示した指標のことです。
支援の度合いが低い方から1~6段階に分けられており、認定調査の結果によって区分が決まります。
「生活介護」のサービスを利用する際には、この「障害支援区分」の認定を受けることが必要です。
【「生活介護」支給決定までの流れ】
生活介護を希望する方は、まずはお住まいの市区町村で「障害支援区分」の申請を行いましょう。
申請後には、市区町村の相談支援事業者が訪問し、「障害支援区分」を決めるための認定調査が行われます。
「障害支援区分」の認定が下りたら、次は市区町村の調査員による訪問調査が行われ、申請者の心身の状況、社会活動や介護者、居住状況、サービスなどの利用計画案、サービスの利用意向、訓練や就労などに関する勘案事項の聞き取りが行われます。
調査が終わると、今度は市区町村に「サービス等利用計画案」を提出することが必要です。
一般的には、市町村の窓口で指定特定相談支援事業者が作成しますが、自分で作成することもできます。 これらの調査や提出書類を勘案し、支給が決まります。
【障害福祉サービス受給者証】
支給が決定すると、「障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)」が発行されます。
これは障害福祉サービスを受けるために必要な許可証なので、障害者手帳とは別物です。
受給者証には氏名や住所など利用者の個人情報や、受給証の期限、支給決定期間、受けられるサービスの種類などが書かれています。
尚、受給者証には項目ごとに個別の有効期限があるため、取得後には定期的な更新を忘れないように気を付けましょう。
【「生活介護」に必要な費用】
障がい福祉サービスの自己負担額は、利用者の所得に応じて4区分の負担上限月額があります。
そのため、利用者がひと月に利用したサービスの量にかかわらず、定められた上限以上の費用が発生することはありません。
実質的には、厚生労働大臣が定めた額のサービス利用料金の1割と、食費や光熱費の実費を利用者が負担します。
障がい福祉サービス利用料負担の上限額は世帯収入などによって、月ごとに以下のように定められています。

① 生活保護受給世帯:0円
② 市町村民税非課税世帯:0円
※3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象
③ 市町村民税課税世帯:9,300円
(所得割16万円未満が対象であり、入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く人)
※収入が概ね600万円以下の世帯が対象
④ 上記以外:37,200円

家庭ごとに異なりがありますので、詳しくはお住まいの市区町村の福祉担当窓口でご確認ください。
●まとめ
障害者総合支援法による障がい福祉サービスを受けるには、障害区分認定や受給者証の発行、サービスの認定を得ることが必要です。
介護給付のひとつである生活介護のサービスを希望する際にも、同様の申請手続きを行います。
生活介護では、利用者が活き活きとした日中活動を行うためのプログラムや、日常動作に必要な介護、日常生活や社会生活で必要とされるさまざまな支援や取り組みが行われています。 生活介護をもっと知りたい、ぜひ受けてみたい、と思われた方は、まずはお住まいの市区町村の地域福祉課、保健センター、基幹相談支援センター、相談支援事業者などへ相談してみると良いでしょう。

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