コラム

就労継続支援A型・B型とは

私たちが利用できる障がい福祉サービスにはさまざまな種類があります。
なかでも、就労に関わる支援サービスの数は多く、どのような違いがあるのか分からない方も少なくないでしょう。
ここでは、就労支援サービスのなかでも特に気になる「就労継続支援A型」、「就労継続支援B型」について詳しく解説をしていきます。

障害者総合支援法が定めたサービス
障害者総合支援法は2013(平成25)年4月に施行された法律です。
この法律では、障がいのある方が受けられる、障がい福祉サービスについて定めています。
この障がい福祉サービスのなかに「自立支援給付」というものがありますが、これは利用者が自分自身でサービスを選んで契約し、利用できる制度です。
今では当たり前のように感じますが、以前は行政が決めたサービスや利用先を利用する仕組みになっていたため、自分が必要とするサービスを選ぶことはできませんでした。
このように、障害者総合支援法では自立支援給付を「福祉サービスを受ける権利」として位置づけています。
自立支援給付の代表的なものとして、以下のような支援サービスがあります。

〇介護給付
居宅介護(ホームヘルプサービス)や施設入所支援等の、日常生活に必要な介護支援サービスです。
〇訓練等給付
障がい者が地域生活を行うために、利用者それぞれの適性に応じて一定の訓練が提供されます。機能訓練、生活訓練、就労に関わる支援サービスなどがあります。

〇計画相談支援
①サービス利用支援
申請した障がい福祉サービスの支給決定前に、利用者のサービス等の利用計画案の作成を行うものです。支給決定後には、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、サービス等の利用計画の作成を行います。
②継続サービス利用支援
支給決定されたサービスなどの利用状況の検証(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整を行います。

〇地域相談支援
①地域移行支援
障害者支援施設、精神科病院、保護施設、矯正施設などを退所する障がいのある方や、児童福祉施設を利用する18歳以上の人が対象です。利用者の地域移行支援計画書の作成や、相談による不安解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整を行います。
②地域定着支援
居宅において単身で生活をしている障がいのある方が対象です。常時の連絡体制を確保し、緊急時には必要な支援を行います。

〇自立支援医療
①精神通院医療
心身の障がいを除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減するための公費負担医療制度です。
②更生医療
身体に障がいのある方で、その障がいを除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる場合に提供される、更生のために必要な自立支援医療費の支給を行う制度です。
③育成医療
障がいのある子ども(医療を行わない時には、将来障がいを残すと認められる疾患のある子どもを含む)で、その身体障がいを除去・軽減する手術の治療によって、確実に効果が期待できる方に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行う制度です。

〇補装具
障がいの状態によって義肢や車椅子等の補装具の購入や修理が必要と認められた際に、費用が補装具費として支給されるサービスです。

なお、就労継続支援A型・B型の就労支援サービスは、自立支援給付のなかの「訓練等給付」によって提供されます。
このサービスは、利用料を金銭で支給するのではなく、サービスの提供などといった「現物給付」という形で支給するものです。
就労継続支援とは?
就労継続支援とは、働く意思があるにもかかわらず、就労機会になかなか恵まれない方や、適切な支援があれば就労できる方に対し、就労機会を提供するためのサービスです。
このサービスには「就労継続支援A型」、「就労継続支援B型」の2つの種類があり、利用者それぞれの生活状況や障がいの程度に合わせて利用先を選ぶことができます。
受給条件として、今までに利用したサービス内容が所定の項目と合致していることが必要です。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、利用者と事業者の間で雇用契約を結ぶ雇用型の就労支援サービスです。
利用者は事業者が運営している作業所へ通うことで就労機会が得られ、報酬には最低賃金が保障されています。
また、利用者は就労と同時に一般就労に必要な知識や技術を身につける訓練を受けたり、生活支援員などから健康管理の指導や相談支援なども受けたりすることが可能です。
事業者は就労や訓練を通じて、一般就労に必要な知識や能力が高まった利用者に対し、一般就労への移行に向けた支援を行います。
就労継続支援A型には利用期間の制限はありませんが、年齢制限があるため、原則としてサービスを利用できるのは65歳未満です。
(※例外として、65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受けていた方で、65歳に達する前日において就労継続支援A型の支給決定を受けていた方は引き続き利用することができます)
また、就労継続支援A型の利用者として、政府は以下のようなケースを想定しています。

〇利用者像…就労機会の提供を通じ、生産活動に必要な知識や能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な方(利用開始時65歳未満の方)
〇具体例
①就労移行支援事業を利用したものの、企業などの雇用に結びつかなかった方
②特別支援学校を卒業し就職活動を行ったものの、企業などの雇用に結びつかなかった方
③企業などを離職した方など、就労経験がある方で現在雇用関係がない方

就労継続支援A型は、各事業所によって提供されるサービス内容やその水準は異なりますが、就労内容がより実践的であるため、一般企業への就職者が就労継続支援B型よりも多い傾向にあるのが特徴です。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、利用者と事業者の間で雇用契約を結ばない非雇用型のサービスです。
利用者は事業者が運営する作業所へ通いながら、就労や生産活動の機会の提供を受けることができます。
就労や生産活動に雇用契約を伴わないため、最低賃金の保障はなく作業あたりの報酬額は事業所によって異なります。
就労の内容は単純作業が多いため、利用者の能力や障がい特性に応じたペースで作業を行うことが可能です。
また、利用者は就労と同時に一般就労で必要な知識や技術を身につける訓練を受けたり、生活支援員などから健康管理の指導や相談支援などを受けたりすることができます。
事業者は就労や訓練を通じて知識や能力が高まった利用者へ、就労継続支援A型や、一般就労への移行に向けた支援を行います。
就労継続支援B型には、利用期間の制限や年齢制限はありません。
就労継続支援B型の利用者として、政府は以下のようなケースを想定しています。

〇利用者像…就労移行支援事業等を利用したものの、一般企業などの雇用にむすびつかない方や、一定年齢に達している方などで就労の機会等を通じ、生産活動に必要な知識や能力の向上や維持が期待される方
〇具体例
①一般就労をしていて、年齢や体力などの理由で離職したが、生産活動を続けたい方
②50歳に達している方、障害基礎年金1級受給者の方
③就労移行支援事業を利用したが、必要な体力や職業能力の不足等により、就労に結びつかなかった方
④①や②のいずれにも該当しない方で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面での課題等の把握が行われている就労移行支援事業B型の利用を希望する方
⑤障がい者支援施設に入所する方については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案の作成の手続を経た上で、市町村により利用の組合せの必要性が認められた方

就労継続支援B型は、最低賃金の保障がなく工賃は低めですが、利用に年齢制限がなく、一人ひとりの障がい特性に応じた作業や訓練を利用者のペースで受けられるメリットがあります。
就労継続支援の利用の仕方
就労継続支援の対象者は、身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病などがある方です。
A型は利用に年齢制限があり、18歳以上~65歳未満の方が対象とされますが、B型には年齢制限はありません。
就労継続支援を利用するにあたり、A・B型ともに障がい支援区分は問われません。
また、障害者手帳は必要ではない場合もありますが、事業所によっては障害者手帳の所持が利用条件に含まれるところもあります。
しかし、主治医が就労継続支援の利用の必要性を認めた時には、手帳がなくても利用申請ができる場合もあるため、まずは希望する事業所との事前の相談が必要です。

就労継続支援を利用する際の具体的な流れは以下の通りです。
【就労継続支援A型の利用の流れ】
①主治医と相談をする
②希望の求人を探す
③求人へ応募し、面接を受ける
④採用内定後、市区町村窓口で利用申請をする
⑤受給者証の発行、事業所との契約、通所開始

就労継続支援A型の求人は、市区町村の障害福祉担当の窓口やハローワークなどで紹介を受けられますし、インターネットで事業所を探して直接申し込むこともできます。
また、事業所ごとに提供されるサービスが異なるため、事前に見学を申し込むと選ぶ際の参考になるでしょう。
申し込み後には履歴書や必要書類を提出し、一般雇用と同じように面接を受けます。
採用が決まった際には、お住まいの市区町村の障害福祉課に就労継続支援A型の利用の申請が必要です。
申請後は窓口の担当者による聞き取り調査と、サービス支給認定のための会議を経て支給が決まります。
また、サービスを利用するにはサービス等利用計画案の提出が必要です。
一般的には、市町村の窓口で指定特定相談支援事業者が作成しますが、自分で作成することもできます。
支給が正式に決定すると、障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)が発行されます。
これは障害福祉サービスを受けるために必要な許可証なので、障害者手帳とは別物です。
受給者証には氏名や住所など利用者の個人情報や、受給証の期限、支給決定期間、受けられるサービスの種類などが書かれています。
なお、受給者証には項目ごとに個別の有効期限があるため、取得後には定期的な更新を忘れないように気を付けましょう。
【就労継続支援B型の利用の流れ】
①主治医と相談をする
②主治医の許可が出たら希望の事業所を探す
③事業所との相談で利用が決まった場合、市区町村窓口で利用申請をする
④受給者証の発行、事業所との契約、通所開始

就労継続支援B型の事業所は、市区町村の障害福祉課などで紹介を受けたり、インターネットで事業所を探したりして申し込みができます。
また、通院先の医療機関にソーシャルワーカーがいる場合には、相談してみると良いでしょう。
さまざまなアドバイスを貰うことができるので、事業所の選定をスムーズに進めることができます。
また、事業所ごとにサービス内容や特色が異なるので、事前に見学をするのがお勧めです。
見学の際には作業体験ができるところも多いので、利用者の希望に沿うかを考えて検討できます。
事業所との相談の上で通所が決まった際には、お住まいの市区町村の障害福祉担当の窓口に就労継続支援B型の利用の申請が必要です。
申請後は窓口の担当者による聞き取り調査と、サービス支給認定のための会議を経て支給が決まります。
また、サービスを利用するにはサービス等利用計画案の提出が必要です。
一般的には、市町村の窓口で指定特定相談支援事業者が作成しますが、自分で作成もできます。
支給が正式に決定すると、障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)が発行されます。
受給者証を事業所へ持参し、契約手続きを行ったうえで通所開始となります。

●まとめ
就労継続支援サービスにはA型とB型の2種類があり、利用者の生活状況や障がい特性に応じて利用することができます。
就労継続支援を希望する際には、まずは主治医へ相談することが大切です。
作業内容によっては一定の体力を必要とするものや、一定時間の作業の継続を求められる場合もあるからです。
また、提供されるサービス内容や利用条件については事業所ごとに異なりがあるので、気になる方は希望先の事業所へ相談してみましょう。

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