コラム

自立訓練(生活訓練)とは

障害者総合支援法が定める障がい福祉サービスのなかに、「自立訓練」があります。
一見、就労に関する支援のように思えますが、これは障がいのある方が自立して日常生活を送れるようになるための訓練を行う支援サービスです。
ここからは「自立訓練」と、そのなかのサービスのひとつである「生活訓練」について詳しく解説していきます。

訓練等給付の種類
そもそも、障がい福祉サービスの種類は、介護を中心とする「介護給付」と、生活訓練などを中心とする「訓練等給付」の二つに大きく分かれます。
「自立訓練」はこのうちの「訓練等給付」に位置付けられるサービスです。
訓練等給付で提供されるサービスは、日常生活のサポートや日常動作の訓練を行うための支援サービスと、就労のための支援を行うサービスの二つに大きく分けられます。
訓練等給付で提供している、日常生活のサポートや日常動作の訓練に関わる福祉サービスは以下の4種類(①~④)です。
なお、この中に本コラムで取り上げる「自立訓練」がありますが、「自立訓練」は利用者の目的に合わせて「自立訓練(機能訓練)」(①)と、「自立訓練(生活訓練)」(②)の二つに分かれます。
また、似た名前で混同されがちなサービスとして「自立生活援助」がありますが、これは既に単身等で居宅している利用者が対象の居宅支援型のサービスです。
【訓練等給付で利用できる機能・生活訓練や生活支援のサービス】
①自立訓練(機能訓練)
自立した日常生活や社会生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持や向上のために必要な訓練を行う。

①自立訓練(機能訓練)
自立した日常生活や社会生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持や向上のために必要な訓練を行う。

②自立訓練(生活訓練)
自立した日常生活や社会生活ができるよう、一定期間、生活能力の維持、向上のために必要な訓練や支援を行う。

③自立生活援助
一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により日常生活における課題を把握し、必要な支援を行う。

④共同生活援助
夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつ、食事の介護、日常生活上の援助を行う。

上記の「自立訓練(機能訓練)」(①)は、主に身体的なリハビリテーションなど、身体機能の維持や回復を目的としたサービスです。
入所施設や病院を退所・退院した方が、その後の地域生活への移行を図るうえで、必要とされる身体機能の維持や回復を行うために利用されています。
「自立訓練(生活訓練)」(②)は、生活能力を向上させるための訓練なので、利用者の身体機能の維持・回復がなされていることを前提に行われます。
そのため、先に「自立訓練(機能訓練)」(①)を行い、身体機能が向上した後に「自立訓練(生活訓練)」(②)へ移行することも可能です。
自立訓練(生活訓練)とは?
厚生労働省によると、自立訓練(生活訓練)の具体的な利用者としては、たとえば、以下の①・②のようなケースが想定されています。
【利用ケース】
①入所施設や病院を退所・退院した方で、地域生活への移行を図るうえで、生活能力の維持や向上などを目的とした訓練が必要な方。
②特別支援学校を卒業した方、継続した通院により症状が安定している方で、地域生活を営むうえで生活能力の維持・向上などを目的とした訓練が必要な方。
自立訓練(生活訓練)には利用期間が定められており、原則として最長で2年間利用することができます。
長期入院をしていた方の場合には3年間の利用が可能ですが、その際にはお住まいの市区町村に申請し、審査を経る必要があります。
自立訓練(生活訓練)の主なサービス内容は、入浴や排せつ、食事や料理、洗濯、掃除といった家事の仕方など、利用者が自立した生活を営むうえで必要なことを身につける訓練や、利用者の生活に関する相談やアドバイスなどの実施です。
訓練や支援内容は事業所ごとに異なりますが、他にも金銭や体調の管理の仕方や、ストレスマネジメント、コミュニケーション能力を高めるためのプログラムなどが実施されている所もあります。
これらの自立訓練(生活訓練)のサービスは、通所や居宅、宿泊など、利用者の生活状況や障がい特性に合わせてどこで利用するのかを選ぶことが可能です。
通所型では、利用者が事業所へ通うことでサービスを受け、居宅型は専門スタッフが利用者の自宅へ訪問し、支援や訓練が行われます。
宿泊型では、利用者が障がい福祉施設などの事業所に生活拠点を一時的に置き、宿泊をしながらサービスを受けられます。
宿泊型の主な利用者は、日中、一般就労や障がい福祉サービスを利用している方です。
事業者は一定期間、居住する場所を提供し、利用者が日中の就労やデイサービスなどでの活動を終えて施設に帰宅した後で、生活能力等の維持・向上のための訓練やその他の支援を行います。
宿泊型の場合、利用期間は原則1年間で、利用開始から3か月ごとに利用継続の必要性についての確認が必要です。
これら自立訓練(生活訓練)のサービスを利用する際には、自立訓練(生活訓練)を実施している、障がい者支援施設や、障がい福祉サービス事業所と契約を結びます。
また、事業者との契約と同時に、お住まいの市区町村の担当窓口での手続きが必要です。

自立訓練(生活訓練)の利用の仕方
自立訓練(生活訓練)を利用するにあたり、障がい支援区分は問われません。
また、障害者手帳は必要ではない場合もありますが、事業所によっては障害者手帳の所持が利用条件に含まれるところもあります。
しかし、主治医が就労継続支援の利用の必要性を認めた時には、手帳がなくても利用申請ができる場合もあるため、希望する事業所との事前の相談が必要です。
自立訓練(生活訓練)を利用する際の具体的な流れは以下の通りです。
【自立訓練(生活訓練)の利用の流れ】
①希望する自立訓練(生活訓練)事業所を探す
②市区町村窓口で利用申請を行い、認定調査を受ける
③受給者証の発行、事業所との契約、利用開始
①の自立訓練(生活訓練)の事業所は、お住まいの市区町村の障害福祉担当の窓口で紹介を受けられますし、インターネットで事業所を探して直接申し込むこともできます。
②の段階では、利用したい事業所を決めたら、お住まいの市区町村の障害福祉課に自立訓練(生活訓練)の利用の申請が必要です。
申請後は窓口の担当者による聞き取り調査と、サービス支給認定のための会議を経て支給が決まります。
また、サービスを利用するにはサービス等利用計画案の提出が必要です。
一般的には、市町村の窓口で指定特定相談支援事業者が作成しますが、自分で作成することもできます。
③の段階で、自立訓練(生活訓練)の利用が正式に決定すると、障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)が発行されます。
受給者証は、障害福祉サービスを受けるために必要な許可証なので、障害者手帳とは別の物です。
受給者証には氏名や住所など利用者の個人情報や、受給証の期限、支給決定期間、受けられるサービスの種類などが書かれています。
なお、受給者証には項目ごとに個別の有効期限があるため、取得後には定期的な更新を忘れないように気を付けましょう。
受給者証を事業所へ持参し、契約を行うと利用ができるようになりますが、事業所ごとに契約手順は異なる部分があるため、確認が必要です。
自立訓練(生活訓練)にかかる費用
自立訓練(生活訓練)の利用料は、利用者や配偶者の前年度の所得に応じて変わりますが(1割負担)、あらかじめ決められた一定額以上の負担は生じません。
具体的な利用料金の算出方法は以下の通りです。
【自立訓練(生活訓練)の利用料金】
・生活保護世帯…負担上限月額0円

・市町村税非課税世帯…負担上限月額0円
(3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります)

・市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)…負担上限月額9,300円
(収入が概ね600万円以下の世帯が対象になります)

・上記以外…負担上限月額37,200円
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(20歳以上の入所施設利用者)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「上記以外」となります)

●まとめ
日常生活を送るうえで暮らしの不安や悩みがある際には、自立訓練(生活訓練)を利用するのがお勧めです。
専門員が利用者一人ひとりのニーズに寄り添ったプランを作成し、利用者は自分の生活状況に合う方法で無理なく利用することができます。
事業所ではさまざまなプログラムやレクリエーションなどが実施されており、事業所ごとに特徴や雰囲気は異なります。
自立訓練(生活訓練)が気になる方は、まずはいくつかの事業所を見学して比較してみるのがお勧めです。

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