コラム

「直B問題」とは何か

就労アセスメントの導入背景から活用方に迫る
「直B問題」とは、特別支援学校を卒業した生徒が、直ぐに就労継続支援B型事業所を利用できないという問題です。従来、就労継続支援B型事業所に受け入れてもらうためには、利用者が自ら希望し、手続きを行うという手順でしたが、平成27年4月より、「就労アセスメント」の提出が求められるようになったことによって、必ずしも希望した通りに利用できるわけではなくなりました。国は、就労アセスメントの導入によって、希望する利用者の利用が適切なのかを、一般就労等を含めた就労支援サービスの将来的な可能性を視野に入れてアセスメントする必要があると考えています。本記事では、直B問題について紹介するとともに、就労アセスメントの導入背景から活用方についても触れていきます。
そもそも就労支援B型事業所とは
就労支援B型事業所とは、障がいの特性をもつことによって、一般就職に困難をきたす場合に、雇用契約を結ばずに生産活動や職労訓練を行えるサービスです。就労支援事業所では、障がいの特性に合わせて、仕事内容や勤務時間を調整することができ、パソコンや軽作業を中心としたさまざまな仕事や職業訓練を行えます。「直B」とは、特別支援教育を卒業後に、一度も一般就労することなく、「直ぐに就労継続支援B型事業所に入ること」です。障害者総合支援法によって定められた、就労支援サービスの一つとして、「就労の機会の提供」や「就労に必要な能力を育む」ことを目的としています。
就労支援B型事業所を利用できる人
対象となる利用者は以下の3つのうちに該当する人です。

① 年齢や体力の面で一般企業での雇用が困難となった障がい者
② 50歳以上の方、障害基礎年金1級の受給者
③ 就労(直B)アセスメントで就労面の課題等の把握が行われている就労継続支援B型の利用希望者

③に記載されているように、①と②に当てはまらない希望者は就労アセスメントを提出しなくてはなりません。主に、特別支援学校の卒業生や今まで就労経験のなかった年齢層の低い障がい者が該当し、アセスメントにより就労面の意欲や課題などの把握が求められます。
就労アセスメントは利用者に寄り添う資料
就労アセスメントとは、就労継続支援B型サービスの利用を希望する人が、最も適した事業所で働けるように、就労能力や就労に対する意欲などを評価するシステムです。就労継続支援B型の受け入れの適否を判断するだけでなく、その他の就労支援サービスの利用や一般就労などを行う可能性も踏まえて、希望者に適した就労の場を長期的に評価する資料となります。
就労アセスメントを通して継続的な支援が可能となる
就労アセスメントは、利用希望者の能力や生活状況を把握し、継続的に就労支援を行うことを目的としており、主に、就労移行支援事業所によって実地されます。市区町村に配置される、就労移行支援所では、定期的な面談や作業の観察チェックなどを通して、利用希望者の作業能力や集中力、働く意欲などを把握し支援につなげていきます。就労アセスメントにより得た情報は、利用者のニーズに合わせて関係機関の間で共有・更新され、長い間活用されることとなります。
就労アセスメントは、就労継続支援B型サービスの利用を希望する人を中心として実施されますが、就労継続支援B型利用の適性把握のみを目的としているのではなく、それ以外の就労継続支援A型、就労移行支援事業所、一般就労を含めた就労についての適性を評価するためにも使われるようになります。国は、就労アセスメントを、「利用できる」「できない」という2者択一的な手続きではなく、利用者に最も適した就労の場にスムーズに移っていくために重要であるとしています。
一般就労への移行も視野に入れたアセスメント
就労継続支援B型の新規利用者に対する長期的な支援を行っていくためにも、一般就労への移行の可能性も視野に入れた利用者のニーズを把握する必要がありました。国は、特別支援学校を卒業後、直ぐにB型事業所に利用者をつなげるのではなく、一度、就労事業所によってアセスメントを行なってから、適切な利用者の受け入れを行うようにしたといえます。 就労アセスメントが必要になったことによって、観察結果によっては、希望する利用者が必ずしも就労継続支援B型事業に受け入れられるとは限らないようになりました。就労アセスメントが取り入れられた背景には、特別支援学校の半数以上の卒業生が卒業後に障害福祉サービスを利用していることや、就労継続支援B型から一般就労に移行する利用者がほとんどいないといった状況があります。また、一般就労が可能な人材が、進路指導のなかで福祉就労を勧められたり、本人の意向や課題を軽視して一般就労を勧めたために、就職後すぐに、離職してしまうといった就職先とのミスマッチを防ごうとするためでもあります。
就労アセスメント実施期間は1ヶ月
就労アセスメントの実施期間は基本的には約1ヶ月です。ただし、地域的な事情や家族の状況によりアセスメントの実施期間が確保できない場合には、期間を短くできます。
特別支援学校の卒業生、及び、在学生の場合は、原則として、一週間程度の暫定支給を就労移行支援サービスから受けた後に、就労アセスメントを実施するようになります。行われる時期は、学校と事業所間で取り決められることが多いですが、基本的には夏休みや冬休みといった長期休みを利用することが多くなります。
客観的な情報を把握するために行われる就労アセスメントプログラム
就労アセスメントの実施中には、働くことを希望する利用者の作業能力や、就労意欲、集中力などの客観的な情報を把握するために、組み立て作業や梱包作業といった軽作業を中心に行います。また、就労アセスメントプログラムの中では、作業能力の確認だけでなく、定期的な面談を通して、利用者の生活能力や就労態度などのチェックもあります。
就労アセスメントにおけるチェックのポイント
就労アセスメントを行うにあたっては、以下のようなポイントで作業を行う障がい者を観察し、就労面の能力についての判断が行われます。

・1日何時間の作業を行えるか
・作業に向き合う力はどれくらいあるか
・欠勤や遅刻をした際に必要な連絡はできるか
・自分の感情をコントロールすることはできているか
・作業中の集中力の維持はできているか
・作業の正確性はどうか
・作業時間と休憩時間の区別は理解できているか
就労アセスメントの結果の使われ方
就労アセスメントの結果は、各支援機関において必要な手続きや支援を行う際に使われるようになります。具体的には以下の項目が挙げられます。 ・相談支援事業所によるサービス等利用計画の作成
・就労継続支援事業所利用者の能力向上に向けた支援
・就労継続支援事業所利用者の安定就労に向けた支援
・ 相談支援事業所によるモニタリング
・ 一般就労への移行支援
・ 一般就労移行後の職場定着支援
・ 一般就労の継続が困難となった者が就労継続支援事業等に円滑に移行できるようにするための支援
また、就労アセスメントの実施は就労支援事業所によって行われますが、それ以降は利用者に関わる各支援機関によって情報が追記・更新されていくようになります。
アセスメントを経てB型事業利用するまでのステップ
就労継続支援B型事業所にアセスメント経て利用するまでの流れについて紹介します。
ステップ①市町村窓口へ相談
就労継続支援B型に入所したい旨を、市区町村の障害福祉窓口に伝えます。就労アセスメントを受けるために、就労支援事業の利用申請を行います。

ステップ②就労アセスメントを受けるためのサービス等利用計画書の作成
相談支援事業所は就労移行支援事業所または、障害者就業・生活支援センターに連絡し、就労アセスメントの実施について調整を行います。

ステップ③就労アセスメントを受けるためのサービス等利用計画書を受け取る
利用者は、相談支援事業所から作成された就労アセスメントを受けるためのサービス等利用計画書を受け取ります。

ステップ④市町村によるアセスメントのための暫定支給決定
利用者は、アセスメントのための暫定支給決定によるサービス等利用計画書を市町村に提出し、暫定支給を受けます。

ステップ⑤相談支援事業所によるモニタリング
利用者は、就労移行支援事業所が実施する就労アセスメントを受け、相談支援事業所によるモニタリング結果をもらいます。
モニタリング結果によっては、一般就労やその他の支援サービスを提案される場合があります。

ステップ⑥市町村にB型事業の利用申請
相談支援事業所からB型事業の利用提案を受けた利用者は、B型事業の利用申請を市町村に提出します。

ステップ⑦相談支援事業所によるB型事業利用のためのサービス等利用計画案の交付
相談支援事業所からB型事業利用のためのサービス等利用計画案を受け取ります。

ステップ⑧市町村にて支給決定
利用者は、B型事業利用のためのサービス等利用計画案を市町村に提出し、支給決定を受けた後に事業所の利用を開始します。
●まとめ
本記事では、直B問題について紹介するとともに、就労アセスメントの導入背景から活用方についても触れてきました。直B問題の背景には、特別支援学校を卒業後直ぐに就労支援B型事業所を利用することによって、本来利用者が持っている能力を最大限発揮することができないという状況がありました。就労アセスメントが開始される前は、特別支援学校の進路指導にあたる先生の力量に偏ることが多く、客観的な視点が不足することによるさまざまな問題が発生していました。 就労アセスメントが入ったことによって、一定期間のなかで利用者の就労能力や適正を判断することが可能となります。一度作成を行えば、就労支援サービスによって随時更新させていくことができるため、関係機関同士の情報交換と共に長期的な支援につなげていくことが可能です。就労支援サービスを活用する利用者が安心してサービスを受けていくためにも就労アセスメントは重要なプログラムといえます。

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